ちょス飯の読書日記

 『蛇鏡』  ★★☆☆☆

蛇鏡 (文春文庫)

蛇鏡 (文春文庫)

 20年前に書かれた、恐怖伝承もの。蛇の描かれた魔鏡が、美しい女達を死に導く。奈良の田舎の神主のみが、村祭りの藁でできた蛇神様のいわれを知り、恐怖している。まだ、駆け出しの頃の坂東の作。

 最後は、恐怖はこれから始まる、というところで終わった。

 女たちが「この世の苦しみから逃れるためには、鏡の中に行くしかない」、と自殺に追い込まれる必然性の描写が甘い。

 主人公のじいさんが、お向かいのいたいけな少女に、性的ないたずらをしていた場面は、ひどいと思ったが、被害者の少女が長じてからそれに傷ついているとか、心身が汚された、という描写の仕方はしない。ここが、坂東の特徴だろうか。
 
 日本各地に、今も残る風習、因習。「祭り」の意味。坂東は、もっともっと書きたかったことだろう。

 昨年の今頃、彼女は病室のベッドの上にいたのだろうか。彼女の遺したものを、これからも全部読んでいきたい。