ちょス飯の映画評
『リスボンに誘われて』 ★★★★☆
NHKラジオの映画案内で、どうしても見たくなった映画。
偶然が人生を作る・・・まさに、その通りのストーリ。
1974年まで、ポルトガルが独裁政権国家だったことを私は全く知らなかった。
そして、為政者側の反体制の若者達へのあまりに酷い仕打ちのことも。
あまりに残虐なことをした側も、された側もそのことを語りたがらない。日本の戦争体験者と同じだ。
スイス、ベルンに妻と離婚し、つまらない日々を送る壮年の高校教師の男が、出勤途中に土砂降りの雨の中、橋の欄干から川へ今飛び込もうとしている若い女性を助けたところから、物語が始まる。
彼女は、赤いコートを残して姿をくらませる。
ポケットには、古い一冊の本『言葉の金細工師』とリスボン行きの夜行切符が入っていた。
ヨーロッパを走る特急は、発車してもドアがしばらく閉まらないものなのか。
男は、迷っていたが、動き出したリスボン行き夜行列車に飛び乗る。そして、その本に書かれている言葉に驚嘆する。まさに、自分の考えていたことが著されていたからだ。
後にカーネーション革命と呼ばれる、ポルトガルの革命前夜の若者の中に、その本の作者アマデウがいた。
だが、彼だけが死に、活動していた仲間は皆生延びた。彼らを弾圧した男も。
主人公ライムントは、本のなかに出てきた人に会い、本の続きを探求する。若者達は、今の社会を自由で平等なものにしようと、命がけで活動していた。しかし、・・・。背景が、逆境であろうと、そこには、ごく普通の青春時代の若者達の葛藤があった。
アマデウが、動脈瘤を患い、常に「メメント・モリ」の状態でいたこと、しかし、命は無くなっても一部は残ると書き残したことに、涙がぽろり。
権力者の側の裁判官の父と、相容れない息子アマデウは医師になり、痛みを持つものを救う道を選ぶ。
葬式の場面。墓場が大きな白いガレージのような建物で、同じ大きさのものが並んでいたのに、びっくり。火葬はしないので、土地のないリスボンでは、棺のまま、墓の家の中に安置するようだ。
彼を愛してやまない妹が、彼のノートを見つけて100冊だけを刊行したというこの本、読んでみたい。
無駄が無さ過ぎるのが、やや難点。マイナス1★リスボンの海や街角の光景に、ライムントが胸躍らせる場面が会っても良いのでは。
夫が、原作本を街の本屋さんに予約した。