ちょス飯の読書日記

 『朱鳥の陵』 ★★★★☆
   

朱鳥の陵

朱鳥の陵

 またまた、怖い怖い物語。壬申の乱以後の持統天皇高市皇子額田王、夢占いのできる白妙・・・朝廷の人々のお話。

 人の見た夢を、自分もその中に入り込んで、夢の正体を知ることが出来る。
 白妙は架空の人物だろうが、1300年前の頃の朝廷の権力闘争や宮中の人々が、生き生きと描かれている。難読漢字にルビを振ってあり、非常に読みやすかった。

 讃良(さきら)後の持統天皇の恐ろしさときたら、ない。
 嫉妬の焔が夫の命を奪う。だが、息子がふがいないからと、これも殺そうとしたというのは、ちと合点が行かない。

 まさか、このような終章になるとは。悲しくも恐ろしかった。時の権力者が、有無を言わせず人の命を軽々と奪う。

 鬼気迫る最後だった。白妙の兄が「稗田阿礼」となるのは、腑に落ちない。天の香具山に干されている白妙が、衣の色ではないとは・・・。

 鴆(チン)という架空の鳥が、朱鳥(あかみどり)なのか。

 歴代天皇の中で、初めて火葬になった持統天皇。煙になり天に上り、神になって、自分の罪を帳消しにしたかったという落ちだが、・・・。
 やはり、天下人となって、人を殺す自由を持ったとしても、コロしてしまった罪悪感から死ぬまで逃れられなかったのだ。