ちょス飯の読書日記

桃色浄土 ★★★★☆

 珊瑚を奪うためなら、人殺しも構わないという若者組みのリーダ多久馬の非情の顛末。
 大正時代の高知の漁村が舞台。
 補陀落浄土へ渡るという修行僧映俊が、あまりにも自堕落なおっさんで、彼と男女の仲になる魚行商のおばさんさねが脇役というより、まさにこの小説の主題を体得する場面がすごかった。

 昔の村社会では、夜這いが普通に行われていた描写があるが、妊娠した場合、誰の子かわからない子も、受け入れられて育てられたのだろうか。
 性を若い男女が、自由に楽しんでいた時代があったのだ。興味深いことだ。

 また、堕胎、子殺し、子捨てもごく普通に行われていたのだろう。

 村で殺人事件があっても、警察官までぐるになって隠す。村の掟、海の掟の方が隔絶された漁村では守られるのか。そうだろうな、と思う。
 最後に台風と津波という自然災害により村が壊滅するところで終わるが、・・・。主人公健士郎が、平凡で頼りない。彼なりに、いろいろな局面で変わって成長して行くのだが、魅力が薄い。

 『山妣』でも、最後に大勢の主要人物が虐殺されるが、これも、流血場面が多い。怖い。

 せめて、ヒロインりんが生きているところで終わってほしかった。故にマイナス1★