ちょス飯の読書日記
『葛橋』かずらばし ★★★★☆
- 作者: 坂東真砂子
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2001/01/01
- メディア: 文庫
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『恵比寿』は面白かったが、最後は悲しかった。龍涎香(りゅうぜんこう)を浜辺で拾った主婦が大金になると聞いて喜ぶが・・・
龍涎香と言えば『秀吉の枷』に出てきたことを思い出した。秀吉が茶々の腋の匂いにくらくらする場面。
本当に海辺に漂着する、マッコウクジラの排泄物が数千万もの価値があるのなら、血眼になって捜してみたい。
主婦が家族皆のために、必死に働く姿。そして、ふと、日常が嫌になってしまう場面が、共感できた。
『一本樒』いっぽんしきみ、はとても怖い。死んでも、死者はじっと生者を見ている。愛して尽くしてきた夫と妹菜穂に裏切られた志野。
彼女は夫のために山の木の実で果実酒を作るのだが・・・。
またたび酒を、私も飲んでみたくなった。茜色になったものを。またたびに寄生するアブラムシが、味をうまくさせるという。
『葛橋』は、とても怖い。最後には、現実と幻が一緒になってしまうが・・・。古事記のイザナギノミコトが、亡くなった妻に会いに黄泉の国へ行くと、「決して見ないでくれ」と言われていたのに、醜く腐敗していく妻を見てしまう。そして、追いかけられて・・・。イザナギが逃げるために投げた最初のものが「葛」だったという。
葛橋は、川岸の太い杉の木に先ず、蔓を巻いて対岸に渡し、そこにある杉に巻いて作るというが、太古の昔からこうやって人は橋を架けてきたのだろう。
この世と黄泉の国を結ぶ橋も葛でできているのか。
芋壺の中での男女の交わりはすごかったが、最後はちょっと主人公が可愛そうだった。