ちょス飯の読書日記
『白眼子』 ★★★★★
- 作者: 山岸凉子
- 出版社/メーカー: 潮出版社
- 発売日: 2000/11/01
- メディア: コミック
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昭和21年10月、小樽の市場。主人公は、4才か5才の戦災孤児で不細工な「みつこ」。彼女が、祖母の家へ行く途中で親戚の人とはぐれたところを、盲目の霊能者「しろさん」(白眼子)に拾われるところから物語が始まる。
しろさんには、金持ちの愛人になって養なってくれる、勝気で綺麗な加代という姉がいる。
「災難は避けられない」という白眼子の言葉は、既に3.11が来る11年前にこの中に書かれていた。「災難をどう受けとめるかが大事なんだ」「必要以上に幸運を望めば、すみに追いやられた小さな災難は大きな形で戻ってくる」
白眼子は、目が見えない分、別の能力を持った。1人の人の幸、不幸の量はみな等しく同じ量だと言う。小さな災難を小さな幸せに変える能力を持っていた。
大金持ちの「どうすれば儲かるか」と言うことには、彼は予知能力を使わなかった。つまり、彼自身が予知能力を使って大金持ちになることも、できたのに・・・、あえてしなかったのだと思う。
彼は、依頼者と布団を並べ、隣で眠ることで、死者を呼び出し「元気で幸せにしている」ことを夢の中で悲しみで一杯の依頼者に、見せることが出来る。依頼人は、涙を流して喜んで帰って行く。・・・しかし、ものすごい疲労感が、白眼子に与えられる。彼は、依頼者の苦しみを共有し、解き放つために命を削っているかのように・・・。
みつこは、17才になり顔に斜めに並んだ3つのほくろによって、自分を捜していた肉親に再会でき、白眼子の元を去るが・・
12年後、今では29才の未亡人でふたりの子持ちとなったみつこが、加代の出した新聞広告の記事を知り、癌で余命が残り少なくなった入院中の白眼子に会いに行く。
彼にはみつこが光って見えていたという。
彼には、小さき弱き者の叫びが見えたのではないだろうか、彼がみつこを市場の片隅で「見つけて」助けなければ、寒さと飢えで彼女の命は亡くなっていただろう。
白眼子は、みつこを救うことで幸せになった。みつこは、光っているわけではない。何もしていない。しかし、白眼子には、光って見えた。
案外誰かは誰かを知らぬところで照らしているのかもしれない。
霊能者としての白眼子は大勢の人々の悲しみを、ひとつひとつ救ったが、・・・彼も、やはり人に救われていた。
涙がこぼれた。