ちょス飯の読書日記

 『テレプシコーラ』⑤巻〜⑩巻  ★★★☆☆

 『アラベスク』は少女向けのおとぎ話のような、美しいバレエ漫画だったが、こちらはリアルな大人向け。

 バレエ教室の光と影、金銭の問題も出てくる。ごく普通の家庭ではなかなかバレエを習わせられない。まして、教室を運営していくということは・・・・大変だ。

 成功者へは賞賛だけではなく、心無い嫌がらせ誹謗中傷も。今日的問題として、いじめや掲示板への書き込みも。

 社会状況も反映されている。人身事故、車の渋滞。バレエ教室のパトロンでもあった主人公の母方の祖父の倒産。
 また、父方の祖母の病気、介護。
 そして、バレエに付き物の、減量、足の怪我。

 悲しかった。光り輝いていた完璧主義の千花の膝の怪我、手術とリハビリを頑張る姿、思わず妹に当たってしまう。
 彼女のエピソードに心が張り裂けそうだ。あまりに涙を流させられたので、マイナス2★。

 だが、姉を思い新しい境地を見つけた六花の、自分の振り付けによる「トゥオネラの白鳥」の大成功で「完」となったが、最後の方は、もう少し長く描いてほしかった。

 冗漫な挿話だと読んでいたら、どれも伏線になっている。練りに練られた締まったストーリー。そして、踊り子達の肢体の美しい線。発表会の衣装の華麗さ、表紙しかカラーでないのが残念だ。
 主人公、レギュラー登場人物意外は、簡単に描かれているのもご愛嬌。ベタも省略してあり、白っぽい画面なのも、お涼さんの特徴だ。

 六花に影響を与えた空美ちゃんは、一切登場しなかった。二部には出ているのだろうか。