ちょス飯の読書日記

 『何者』 ★★★★☆

何者

何者

 直木賞受賞作。若干23才の作者。
 実体験を基にしたであろう、就職活動中の大学生の模様を描いている。

 ずっと親や教師、家庭と学校に保護管理されてきた学生が、初めて社会に出るとき、自分でいきなり自己アピールをして就職を勝ち取らねばならない。

 コロンビア大学の選択の教授シーナ・アイエンガーは、白熱教室で教えてくれた。面接の15分間で、会社にとってその人が有用かどうかの判断はできないと。

 登場する5人の就活生は厚い友情で結ばれているわけでもない。同棲カップルの男女もいるが、互いにけん制しあっている。

 一流大学で真面目に勉強しても、なかなか内定がもらえないという。不景気も一因だろうが、大手有名企業ばかりを皆が狙い、掛け持ちで応募しているからだろう。どんどん落とされて、だんだんすさんでいく就活生。

 仲間内で内定が初めて決まった彼女を皆で祝福するが、その友人は裏では別のアカウントを持ち徹底的にこきおろしたり、陰口を書いてうっぷんを晴らしている。

 リアルだった。主人公はたいてい、「いいもの」なのだが・・・。あっと驚く展開。

 人生の一番大切な時、放り出される若者。だが、自分で自分を肯定して見栄を張らず生き抜くしかない。

 若者の自殺原因に、就職の失敗を苦にしたというのがある。

 「何者」かになるのではない。そのまま生きていい。