ちょス飯の読書日記

 『abさんご』  ★★★☆☆
 

abさんご

abさんご

 芥川賞受賞作だが、収録されていたタミエが主人公の3短編の方が、ずっと面白かった。
 abさんごは、難解でわかる人にはわかるのだろう。文芸版「ちびまるこちゃん」という感じ。
 幼子であっても、大人より鋭利に物事をわかっており、その記憶を大人になっても持っている。彼女の思い出なのだろうか。

 タミエの話は、どれも重々しく暗い。学校をサボって野山の花を観察したり、木の実を昼食にして遊んでいる様子は可愛らしかった。
 植物学者のような若者が、タミエの勝手に付けた花の名前を、いちいちノートに書き付ける。タミエは、花の本当の名、学名に反発する。
 「タミエの花」は、本当にシャガだったのだろうか。小さい子の、喜び怒り、繊細な心の揺れ、狡さなど、細やかな描写が美しい。
 
 「虹」はちょっと悲しい怖い幕切れだ。サイコ映画のよう。