ちょス飯の読書日記
『木橋』 ★★★☆☆
- 作者: 永山則夫
- 出版社/メーカー: 立風書房
- 発売日: 1984/07
- メディア: ハードカバー
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まったく父母の愛情を感じられないまま、育ったとある。きょうだいからの日常的な暴力。思い込みと恥じらいから、ちょっとのことに過敏に反応して、逃げてしまうN少年。
労働の楽しみを、書いているところは美しい描写だ。
冒頭、飲んだくれの男が、どぶ川に飛び込み泳ぐところを、野次馬があざ笑う場面で、自分の父を思い出すところは、恐ろしかった。
Nはあざ笑うものに、激しい怒りを覚えるが、彼は実は父を非常に愛していたのだろう。愛しているものから、一切愛してもらえなかったら・・・本当に恐ろしい。
愛情と食べ物に飢えて育った少年が、拳銃を手にいれ4人もの人を殺し、死刑囚永山 則夫となったが、・・・獄中で作家になり、社会に死刑廃止を訴え、必死に生きようとした。
彼が人を信じられないのは、確かに環境により形成された、強いられた性質かもしれないが、残念だ。著作の中に、美しいものに憧れたり人から親切にされる場面もある。彼が行くあてを失い、野宿するのはかわいそうだと思ったが、仲間になればマイナス面だけではなく、宿や飯にも確保できたかもしれない。
彼自身の、脳にPTSDによる、海馬の萎縮や損傷、未発達の部分があったとしか思えない。傷つけられたのは確かだ。
だが、人は人によって癒されることもできる。
どうしてもっと、行政側は彼に愛情をもって接してくれなかったのだろうか。
死刑を執行されて、初めて網走の海に遺灰となって辿り着いたというが・・・
ひとり目を、殺してしまった時、何故、警察が捕まえてくれなかったのか、残念だ。