女子剣道部

今週のお題「部活動」 
 私が中学校に入学したとき、そこには未だ女子剣道部はなかった。
だから、私達4人が男子剣道部に入部したときに創部したともいえる。
 男子部員に混じって、練習し、終了時には、何故か皆二列に並んで「黙想ーーー」の部長の掛け声とともに、面を前に置き静かに目をつむった。

 当時女子の剣道人口が少なく、私たちは地区大会に一年から出場し、上位まで進出。体格の良いY子は、実力者で県大会に進み、個人3位になったこともあった。
 私は、本当は演劇部に入りたかったが部がないので、二番目にやりたかった剣道部を選んだのだ。
 体力がないので、短時間だけ集中して、敵の虚を付き面や篭手を奪う競技は、自分に合っていた。
 練習試合では、男子を負かしたこともある。

 だが、そのとき森田健作主演の青春物テレビドラマ「俺は男だ」が流行っていて、それを見て剣道を始めたと思われるのが悔しいので、一回も見なかった。
 自分のことなど誰も何も評価していないし、なんとも思わなかっただろうに、ひとりで妄想の中で闘いをし、「こう思われてなるものか」と勝ったり負けたりしていたのだ。

 2人の近所の子と私、別の小学校からきたY子の4人が初代女子剣道部員。
 一番強かったのは、友達がいなくても剣道をやりたいという意気込みで入部したY子だ。赤銅鈴の介のような、赤い防具を母に買ってもらい、Y子は練習に励んでいた。
 彼女は、推薦で剣道の強豪高校に入学。その快挙に、私たちは驚いていたが・・・その後、残念ながら練習が厳しく付いていけず、他校に転校したと風の噂で聞いた。
 彼女は強かった。
 メーンというとき最後に「っっス」をつけるので、嫌だったが。だが、試合に負けると、「足を怪我していたから。」と急に片足を引きずって歩くのだった。
 
 弱い私達を、馬鹿にしていたが、あまり腹が立たなかった。彼女にあだ名をつけて蔭で悪口を言っていたから。長いあだ名なのだが、始めの3部分は本人の身体特徴を揶揄しているので、最後の部分を記そう。
 「なんとかかんとか・・・負けたらいたたたじっさ」
 じっさとは、年寄りの男性のことだが・・・声も低く野太く、男性的でたくましかったから。Y子は、きっと今も元気にしていることだろう。
 
 友達がいないところへ飛び込んで、やりたいようにやり、稽古を積み大活躍する。昔は、ごく当たり前のことだったが、今の子は「ともだち」の呪縛できゅうきゅうしているのではないだろうか。
 新しい環境で、新しい人に出会い、友情を育む。部活動では、授業と違い学年の違うものとも交流できる。たった一年を先輩だ、後輩だといって大騒ぎする。社会の縮図を経験できる、素晴らしい場だった。
今では、入部できるか否かが友達の有無で決まるかのような妙なものとなってしまった。
 健全な部活動は、理想であろう。実際は部員の序列、いじめ、派閥がまた社会の縮図そのままに存在しているのだろう。

 Y子のことを40年経った今更ながら、すごいと思う。彼女は友達がいなかった。そして、強かった。