ちょス飯の読書日記

 『わたしの渡世日記』 ★★★★☆
 

わたしの渡世日記〈上〉 (新潮文庫)

わたしの渡世日記〈上〉 (新潮文庫)

わたしの渡世日記〈下〉 (新潮文庫)

わたしの渡世日記〈下〉 (新潮文庫)

 高峰 秀子がとても上手な文章を書く人だと、以前から聞いてはいたが彼女の本を読むのはこれが初めて。
 驚いた。彼女は知性と美貌の持ち主。天才子役といわれ、大人になるまできらびやかな芸能界でずっと売れっ子でいたし、何不自由なく、女優人生を送った人だと思っていたから。
 それは、表層のこと。

 大変な思いをして、女優をしてきたのが、これを読んでわかった。小学校へも、ほとんど行けない中で独学でここまでいきいきと描ける、力。
 身内が、彼女のギャラを搾取してしまう環境。

 とくに、養母が小さい頃は優しくしてくれるのだが、独り立ちを許さず恋愛も禁じ、彼女を経済的にも精神的にも迫害する。これは、本当のことなのだ。なんと、穏やかで優しい母性を演じる彼女が、母の愛を得られず育った人だったとは。

 事実は小説より奇なり。

 私も、同じような育ち。励まされた。母性は日本の芝居では、美しいものとして描かれるが、逆に子どもを苦しめる母も少なくないから、理想として描かれているのかもしれない。

 そして、そんな母に感謝したい。自分が、彼女に鍛えられてここまでこられたのだという、箇所はまったく私も同じ。

 もう少し、もっと読みたくなってマイナス一☆。