夏の味

 母方の祖母の剥いてくれたトマト。手渡しでくれる。冷やしてあってもほんのり、彼女のお手の温かさが付いている。
 塩を少しつけてがぶり。トマトの酸味の強い果汁とぷにぷにした種が、ぷしゅううっと口中に広がる。
 祖母は、何故かトマトの皮を、包丁で丁寧に剥く。

 大人になってからは、皮を剥かないで食べている。

 野菜のえぐみというか、苦味、本来の味は懐かしい。青臭い、固いトマトが好きだ。
 もう、27年経つ。祖母が大晦日に亡くなってから。