ちょス飯の読書日記
『元職員』 ★★★★★
- 作者: 吉田修一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/11/05
- メディア: 単行本
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「貧しい国」タイで、日本国内ではできない贅沢をしてタイ人を潤している、嘘つきな日本人。
私にも覚えがある。
日本では最低賃金でかつかつの暮らしをしている私達が、20年位前にタイへ観光に行った。
街は、好景気でビルの建設ラッシュ。日本では決して泊まれない高級ホテルに泊まり、むせ返る暑さと臭気、人々の群れ、活気。大渋滞を味わった。
何故か、土産を買う時に「タイ人よりわれわれ日本人は、金持ちで偉いんだ」などと思ってしまったものだ。
金持ちの中年男の、1週間のバカンス。現地のイタリアレストランで働く青年に、上玉の若い娼婦を斡旋される。
金はいくらでも、彼女に使える。
が、時々職場や妻のことを思い出す。だんだん、彼は何者なのか分かってくる。彼は、実はごく普通の真面目な、公社職員だ。
では、何故、そんなにたくさん散在できるのか?
彼の心理描写が良い。手が震える。足が震える。
最後に彼は、帰りの飛行機の中で笑いが止まらなくなる。これは、怖い。
彼を殴り倒す、ムエタイボクサー(娼婦の弟)の鉄拳に筆者のタイの人々への愛を感じた。