チョス飯の読書日記

 『新参者』★★★☆☆
 

新参者

新参者

 東野作品にしては、軽い。商店街の庶民の哀歓を綴っている。事件を調べるということは、周辺住民のプライバシーもあからさまになっていくということなのか。
 息子と嫁の無駄遣いのために、父親が不正を働くという落ちは、不自然。

 『差別と日本人』★★★★☆
 

差別と日本人 (角川oneテーマ21 A 100)

差別と日本人 (角川oneテーマ21 A 100)

 対談集。
 何故、日本には部落差別、在日差別、男女差別、障がい者、病者差別ばどがあるのだろうか。
 差別される側として、たくましく生きてこられたおふたりの話の耳を傾けた。
 自分たちが闘う事で、家族が傷つき余計に差別を受けるという箇所は、胸が痛んだ。辛淑玉氏が、在日問題以外のあらゆる差別について、研究し、撤廃に向けた活動を実践されていると知り、驚いた。
 本当に、立派なことだ。
 野中氏の、過去も何も知らなかったが、よくここまでゆるぎない強い信念を持って生きてこられたものだ。

 『罪と罰』★★★★★
 

罪と罰〈1〉 (光文社古典新訳文庫)

罪と罰〈1〉 (光文社古典新訳文庫)

罪と罰〈2〉 (光文社古典新訳文庫)

罪と罰〈2〉 (光文社古典新訳文庫)

罪と罰〈3〉 (光文社古典新訳文庫)

罪と罰〈3〉 (光文社古典新訳文庫)

 これは、実に面白い。亀山氏の放送大学での講演を聞いて、彼の訳のものを30年ぶりに読んだ。
 ストーリー展開も、登場十物も、時代背景も、・・・・すべて良し。

 これは、当時の娯楽大衆小説だったことだろう。1866年から、145年間読み継がれている。クラッシク文学を、平易な現代語訳で亀山氏が約している。ロシア語を習い、いつか原文で読みたい。

 亀山訳『カラマーゾフの兄弟』も読もう。

 ラスコーリニコフの、青年特有の万能感。特別の(未来の)人間は、人殺しも許される、というナポレオン主義。テロを肯定する若者たちは、145年後の現在も、再生産されている。

 彼が、どうやって罪の意識を持ち、再生しようとしていくのか。

 本当に、すごいテーマである。

 マルメラードフと、カテリーナの貧しき夫婦の描写が凄い。とくに、発狂して死んでいくカテリーナの、最期のあがき。
 街に出て幼い子どもに、歌わせ、踊らせ物乞いさせる場面は、哀しくて可笑しい。・・・・

 是非、若者に読んでもらいたい。

 3巻とも、亀山氏による懇切丁寧な解説が付いており、これも読み応えが会った。