ちょス飯の読書日記

『めぐりぐる春』★★★☆☆
 

めぐりくる春

めぐりくる春

 これは、第二次世界大戦中の韓国、朝鮮人慰安婦の凄まじい実態を描いた物語。これほど酷いことを、わが皇軍はしてしまったのだろうか。あまりにも残酷な描写に震えた。
 いや、小説よりもっと酷いことがあったかもしれない・・・・。
 怖い。

 自分の祖国に住む母や娘を守るために、出征した兵士がこれほど理性をなくし戦地の女性に対して陵辱の限りを尽くしたとは・・・。許せない。性欲を管理するための性具として、貧しい娘を騙して売春婦にさせるとは・・・・・

 けれど、全員がケダモノと成り果てたわけではない。慰安婦を妻にした者、大切にしてくれた者もいた。彼女らを哀れみ、買わなかったものもいたと思う。
 絶望的ななかでも、適応して生延びて過去を語り始めた、元慰安婦と呼ばれた人たち。勇気と人間の尊厳が性暴力に負けないことを示している。
 主人公の淳花は 出産の直前まで働かされ、誰の子とも特定できぬ子を、二度産んでいる。しかし顔を見せてももらえず引き離されている兵隊とともに戦地を転々と連れられ、3度目は死産。子宮が腐り摘出されてしまう。

 どのような困難にあっても、生延びた。