大人になったと感じたとき

 あれは辛かった。
 今から、5、6年前だったか・・・ある塾でアルバイトをしていたときのこと。
 経営者の女史は、出来の悪い子を容赦なくなじる。
 アルバイトの私が、その子をかばう仕草を見るや怒りが沸騰。
さらに、雇われアルバイトの私を、子供達が慕って人気爆発状態になったのが、火に油。

 ささいな失敗を見つけ、女史は大声で私を叱りつける。
 「あなただけが、こんなミスをする。他の先生はしませんよ。」などと、子どもの前でパワハラ弾が炸裂だ。「す、すみません・・・」

 ぐっすん。こどもだった私なら、経営者に猛反撃しただろう。彼女自身もミスが多く、忘れ物をしたり、間違いを教えることもしばしば。この棚上げ女がーーー!!
 だが、もう私も40才過ぎ。子どもたちの前で、女史をなじることは決してしなかった。大人になったんだな、私も。
 先生同士が言い争ったら、子どもたちがどんなに悲しむだろう。
彼女を信じて、高い月謝を支払っている保護者には、実態をばらしたかったが・・・
 私はそこまで、正義の味方にはならなかった。

 周りが鍛えて、人を大人にするんだな。保身を第一に考えて、ずるく立ち回るのも、大人になったから・・・

 3年間働いて、故郷の父の介護のためアルバイトをやめた。
 女史は結構、引き止めてくれたっけ。
 彼女は、今までの大人気ない自分の態度のことを、少し反省していたようだ。
大人は、最後に勝つもんだ。