ちょス飯の読書日記

  万城目 学 『ホルモー六景』  ★★★★☆
  

ホルモー六景

ホルモー六景

 鴨川ホルモーの登場人物たちの青春グラフィティ。
とくに「第三景 もっちゃん」と「第六景 長持の恋」が面白かった。
 第三景でもっちゃんが、梶井基次郎のことだとは。檸檬創作時の情景が、愉快な筆致で描かれている。
 いつのことか、書かれておらず主人公はやはり「鼻」好きなので、近頃売り出し中の作家が芥川龍之介のことである、とここで初めて読者はもっちゃんの正体に気ずく。その仕掛けが楽しかった。
 純情な、ごつごつした岩石のような男が、梶井基次郎だったのか。文体は繊細なのに。心も乙女のようなものだったのか。
 
 『鹿男あをによし』にもでてきた料亭旅館「狐のは」で珠美はアルバイトをしながら、蔵の中の長持中の木札で、「ホルモー敗者の罰」として時空を超えて文通をするという不思議な第六景。
 だんだん、文通の相手は信長の家来の一人だとわかってくるが・・・。柏原大鍋とはまた愉快な名前だ。
 「琵琶湖を見せたい」、というのがなべ丸の絶筆となる。だんだん、文通相手を好きになっていくおたま・・・彼が本能寺の変で討ち死にすることは、変えられない。

 しかし、高村の月代に琵琶湖のような形のあせもが・・・・。彼女は、高村と恋人になるというおめでたさ。鮮やか!

 けれど、有名大学の学生ばかりが「ホルモー」使いとして出てくるのでマイナス★。