ちょス飯の読書日記
『こころ』 ★★★★☆
難渋して文語体にやっと慣れた頃読了。「下」がすべて先生の手紙、自分の罪の告白となっていることに驚かされた。恋敵が自殺したことで、ずっと心を病み、遂に自殺しようとしている先生。死なねばならぬほどのことではないと思う。けれど、それほどに、先生の心は傷ついた。Kの心を踏みにじり死に追いやったと思い込むことによって。
欝の人の書く文章だろう。書いている人も登場人物Kも先生も欝だ。
人の死が多く出でくる。両親を亡くした先生と、母を亡くしたK、父が危篤のままなかなか死なない私。
自殺してしまうK。
当時の風俗、街の様子は面白く読んだ。
先生とKから思いを寄せられる「お嬢さん」が天真爛漫で屈託が無く、ただ美しい肉体だけの存在で、まったく「あほう」に描かれている。明治の知識階層の女性観なのか。
日本人の作家には欝の人が多い。読んでいると読み手も欝になっていく。
慰められたり、希望を持って生きていこうというメッセージは無い。