ちょス飯の読書日記

 『おおきく振りかぶって』第13巻まで ★★★★★
ネタバレ注意!
  

おおきく振りかぶって(13) (アフタヌーンKC)

おおきく振りかぶって(13) (アフタヌーンKC)

 今年も、夏の甲子園大会が近づいた。各県代表が決まりつつある今日この頃・・・・

 ひぐちアサという女流漫画家が描いた、女性監督が指揮する埼玉県立西浦高校の硬式野球部の誕生から、埼玉大会予選第5回戦の八回表までを読んだ。部員は一年生だけ。野球センス抜群なのは田島くんのみ、野球好きだがそれぞれ、ごく平凡な能力しかないチームの奇跡の快進撃が、いよいよここで止まるか、というところ。
 五回戦までこれるのは「漫画だから」だけれど、すごくリアルな展開で、決して「奇跡的な勝利」ではない丁寧な試合運びが描かれている。心の声の書き込みがくどすぎるほどだ。巻末の野球ルールの解説も、ものごっつい。野球を知らぬ女性ファンに向けて書いているのだろう。

 今回の相手は、県ベスト8を目標にしている強豪校。キリスト教系の学校なので、応援歌は讃美歌だ。

 ついに、モモカン(でか乳で三つ編みの、高校野球を知り尽くした若き優秀な女性監督)のサインが、相手チーム美ジョウ大狭山に見破られたか?
 試合を組み立ててきた、阿部が負傷しベンチに。いきなりキャッチャーを任される田島。
 阿部くんがいなければ、自分は投げられないと言っていたのに・・・・。そんなことを言うのは間違いだった、と気づくわれらがエースの三橋。
 三橋の自主性を封じた自分の間違いに気づく阿部。

 三橋はビビリだがチームメイトの信頼を得、「自分を頼って」と田島に言う。

 高校に入学して4月に出会って、予選までのわずか三ヶ月間にこれほどの信頼感をお互いに持ち合えるとは。すごい!小気味いい!
 ひとりひとりがそれぞれの役割を、仲間のために精一杯果たしている。
 そして、言葉ではなく試合の中の失敗(思い通りにならない壁にぶち当たってから)体験を通じて自ら学びとって、自分を変えていく。ひとりひとりが、成長していく・・・・
  そこが面白い。

 相手チームのキャッチャーにも何かトラウマがあるようだ。三塁から突進してくるランナーをブロックして負傷させたことか?
 ひぐち氏は、絵はうまくない。
 けれど女性ならではの、優しい細やかなストーリー運びがうまい。
 試練、緊張、あきらめない強さ、笑い、涙。
 主人公チームを描くだけではない。
 負けた相手チームの側からも、悔しさをきちんと描いている。結局、高校球児皆を愛している。
 彼らへの応援歌を、高らかに描いている。


 七対四で負けている西浦高校、八回の裏五番キャブテン花井くんの打席で「続く」となった。

 14巻が楽しみだ!