ちょス飯の読書日記

 『桐野夏生オリジナルセレクション 憑かれし者ども 松本清張傑作選』 ★★★★★

松本清張傑作選 憑かれし者ども 桐野夏生オリジナルセレクション

松本清張傑作選 憑かれし者ども 桐野夏生オリジナルセレクション

 収録作品は『発作』『鬼畜』『馬を売る女』『密宗律仙教』『赤いくじ』解説に桐野夏生、解題 香山二三郎
 どれも、犯罪小説。怖い。人間のものすごい黒い面が、描かれている。コンパクトで面白い。イライラが募っていく場面。映画の原作となった『鬼畜』はどうしようもなく、弱々しい男が子どもを殺そうとする話だ。あまりに情けなく切ない男を、緒方拳は、ものの見事に演じた。しかし、絶賛されたのに彼はその演技には、納得しておらず女優のうまさを誉めていた。原作より映画の方がずっと面白いし、清張氏の作品をぶれることなくより深めて表現していたことがわかった。『密宗・・』は、精力絶倫の教祖が、男根を武器におばはんを操り新興宗教で儲けようとする元印刷工の男の話だが・・・・。モデルがあるらしい。愉快だった。ーー印刷工の男が、「働かずに儲けたい。それには、新興宗教の教祖になることだ」と思いついたーーという件があるが・・・真実だろう。愉快だった。
 『赤いくじ』は、男のいやらしさ、汚さがコミカルに描かれていたが・・・。最期はあっけなく、やや滑稽でもあり哀しかった。朝鮮半島終戦を迎えた、清張の実体験を元に描かれたという。自分の身を守るために女を差し出すとは・・・・。これは、実際にあったことなのだろう。