ちょス飯の読書日記

 大岡 昇平著『野火』

野火(のび) (新潮文庫)

野火(のび) (新潮文庫)

★★☆☆☆
 東京新聞サンデー版で紹介、絶賛されていたので読んでみたが・・・
フィリピンの小島の中で負け戦を強いられ「投降したい」病人の兵士たち。食料が尽きて人肉を喰らう者も現れる。

 非常なインテリの語る戦争の実態なのか、物語なのか・・・。

 人肉食は植物や動物を喰らうことと大して違わぬのでは・・・・

あまり面白くなかった。


 山本 兼一著『利休にたずねよ

利休にたずねよ

利休にたずねよ

★★★★☆
 いろいろな利休にまつわる「ある日」あるいは「あの日」のエピソードを切腹の日から戻って日記風に書いている。

 ただひとり愛した女を、死ぬまで忘れなかった。その形見を妻宗恩が・・・・。ここは、おかしかった。秀吉の嫉妬、横暴により切腹を強いられたことは史実らしいが、緑の釉薬の香合の君とのエピソードは史実なのか、作者の創作なのか?利休に尋ねたい。

 しかし、利休の審美眼、その確かさについては、この記述ではよく理解できない。また、茶をたてる彼の挙措の美しさも具体的にどう美しいのか、想起できない。作者にも分っていないのではないか?

 お茶が流行り身分の高いものも低いものも、熱中したという時代。秀吉の大茶会の様子は楽しい。侘び寂びというが「わざと」自然に見せている演出。とくに、ヴァリニヤーノ神父の日記がすごくおかしい。何故みすぼらしい土器をありがたがり、高価な値を付けられるのか。まずい苦いお茶のどこが良いのか、と。

 利休は現代の山岡さん(美味しんぼ)のように、もてなしの料理により相手を怒らせることも楽しませることも自在に出来る。朝鮮通信使を秀吉の命礼で冷遇するが、主流派と反主流派に相手が分かれていることを知るや、反主流派を朝鮮の料理を振る舞い存分にもてなす。これが、後の朝鮮出兵を成功させる一因にもなっているとの記述、さもありなん。畏るべし茶の湯。大演出家にしてフードプロデューサー利休。ただひとり秀吉を恐れなかった男。秀吉を畏れさせた男。

 お抹茶を飲みたくなった。秋には、父に買ってもらった風呂釜を出して、茶会を開きたい。