ちょス飯の読書日記『しゃばけ』『嫁してインドに生きる』

しゃばけ』★★★☆☆

しゃばけ

しゃばけ

 とてもゆるやかな流れの、のんびりとした江戸時代の妖怪譚。若旦那がひ弱なところも、おかしくて良かった。続編もかなり売れているとのこと。小島慶子キラ☆キラTBSラジオで紹介していたので読んだのだ。 
 妖怪は多分いないのだが、いると信じている人が少なくないし、名前やその性質、素性、その姿の絵まで確定している。とても愉快だ。

『嫁してインドに生きる』★★★☆☆

嫁してインドに生きる

嫁してインドに生きる

 インド人の夫との馴れ初め、大恋愛の麗しき記述が省略されてしまっているのが残念だが、旅人としてではなく、インド人と結婚して暮らしてみて初めて分る彼の国の暮らしぶりを生き生きと写している。筆者の夫は、詩聖と呼ばれるタゴールの一族で大変な上流階級に属する学者であり、彼女自身も追手門学院大学文学部講師(出版時)。知的で素直なごく普通の感覚の日本人により、歴史的考察を含む今を生きるインドの最下層の人々から上流階級まで様々な人々の姿が語られる。
 筆者がインドの文化や習慣を身につけ、良いところを沢山紹介している。また、これは譲れないところもしっかり持って日本人として、インド人の妻を生きている。とても素晴らしい人生だ。
 ただ、夫君の仕事の都合で日本に住み、娘達を普通の小学校に入学させたのだが、いじめに遭い、インターナショナルスクールに入れざるを得なかったところは、悲しかった。現在は、都市部のみならず、田舎にも多くの外国人の子弟が公立小・中学校に通い日本人のこどもたちと学んでいる。いじめもあるかもしれないが、当時より違和感なく学んでいることだろう。
 異文化を面白い、興味を持つ、もっと知りたい交流したいと思う人と排斥しなければいられない人と。必ず違うものを恐れたり、憎んだり馬鹿にしたりする人たちがいるものだ。

  乗るときは交渉の値が1ルピーなのに降りると5ルピーよこせ、5ルピーと約束したはずだと譲らないリキシャの老人。嘘も吐き通し、必死な姿で富めるものにすがりつく人々の力強さ。そして、喜捨が当然であり「富者に善を施させてあげているのだ」という、貧者の真理に驚く。「ありがとう」と言わないのだ、インド人は。富者が貧者に恵み与えるのは義務であるから。
ははは
 まったく日本人と違う。ほんの500円のものでも、他人からもらえば礼を言い、必ずお返しの品を渡さねば人非人扱い。日本人は貧乏人のプライドが高すぎるのだろうか?

 大インドの発展は、いずれ中国をも抜くかも知れぬ。

筆者の長女は渡米しドイツ系アメリカ人と結ばれたと言う。
国際結婚をする人たち、またその子らが、世界を平和にしていくのではないだろうか。異文化を許容し、愛し認める。なんて素晴らしい!ただし、自国の文化を知悉していて、それを忘れない。アイデンティティが確立しているということが絶対条件だ。
現実では、大恋愛の末に国際結婚しても、数年後には離婚するということもあり、こどもをめぐって憎みあう夫婦もある・・・・

この作品は1984年8月31日筑摩書房より刊行された