何回読んでも気持ちE
桐野夏生『OUT』読了。
- 作者: 桐野夏生
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1997/07
- メディア: 単行本
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高卒後二十年来、信金の有能な社員だった雅子は、自分より無能な同僚や後輩がただ「男性」であると言うだけでどんどん出世し昇給していくことに抗議し、リストラされてしまう。家族ともうまくいかない。深夜の弁当工場でパートをするようになり、雅子は便宜上三人の女たちとチームを組む。師匠こと熟練工のヨシエは寡婦。勤勉で、寝たきりの姑を六年間も介護しているが、高校生の娘の修学旅行代8万3千円を払うことも出来ぬほど困窮している。買い物依存症で小悪党の邦子の、派手な醜さと滑稽な姿。四人の中で一番年下で、若くて美しい良妻賢母である、弥生の素直さと間抜けさ。それぞれの女たちの惨めさと辛さ健気さが、非常に克明に描かれている。
弥生の夫・サラリーマンの健司が中国人ホステスに入れ込み、バカラ賭博に手を出し、夫婦の貯金五百万円を使い果たしてしまう。そのことを知り、咎めた弥生の鳩尾にパンチを食らわせる夫。・・・・ついに、切れてしまった弥生が亭主を殺してしまう。
雅子は、翌朝その死体をヨシエを脅して、一緒に解体し、邦子にも手伝わせ細切れにして43個のゴミ袋に入れて、三人で手分けして「燃える生ごみ」として出すのだが・・・・・
犯人だと疑われたのは、健司が通っていたバカラ賭博を開帳していた店のマスター佐竹だった。・・・佐竹は、別件で逮捕されるが証拠不十分で釈放される。しかし、自分が出獄後に前科を隠して築いてきた店も、信用もすべてを失くしてしまう。
佐竹の真犯人探しが始まる。が、健司を殺した真犯人である弥生のことは、健司の保険金五千万円を奪うだけで許して、遺体をバラバラにして証拠を隠滅しようとしたもっと賢く強い雅子に感心し、追い詰めて行くのである。
絶体絶命のピンチに追い込まれても、決して負けないわれらが雅子。いかす。元不良暴走族で今はつぶれかけた街金の社長十文字(自称)のように読者は雅子に惚れ惚れする。
桐野氏はテレビ化・映画化によって「女たちの友情」に重きを置いて描かれてしまったことを悔やんでおられた。「友情などない」と描いたつもりだったそうだ。三年前イタリア大使館にてイタリア人女流作家と『OUT』について公開討論をされたとき、chosu-manmaは生で聴いた。確かに氏は、雅子の孤独を書ききっている。
面白い。四度目また読み始めた。