父ダス①

父の面白エピソード。

父は、私が小学生の頃、家族と一緒に自家用車に土産を一杯積んでごくごくたまに故郷の母に会いに行く。
一時間ほどで着くのだが、私たちにとっては大ドライブであった。
しばらく行くと、いきなり「かぁっ!」と父は痰を出す。しかし口の中に溜めたまま、手でぐるぐるとハンドルを回し窓を開けてからおもむろに、道路にぺっと吐く。
痰は時速40㌔で放物線を描いて飛んだだろうか?
父の痰吐きの絶妙のタイミングに、私は惚れ惚れした。
今考えると「汚い」し、絶対してはならぬ迷惑行為だ。

けれどそのことに、随分大きくなってから気づいた。

私には、「痰を計画的に吐く」父の姿が格好良くてならなかった。