ちょス飯の読書日記

 『夜行観覧車』 ★★★☆☆

夜行観覧車

夜行観覧車

 先にテレビドラマで見ていたが、これは原作よりずっと面白かった。原作は舌足らずで、読者のいろいろな解釈を期待するもの。

 ただ、街の中の高級住宅街に住む人々が、新入家族を小さい家だとあざ笑ったり、貧乏を揶揄嘲笑したりする現実が、恐ろしかった。本当のことだからだ。

 自分の収入に見合った土地、家に住み周りともうまく暮らしていた一家が、その家の主婦の「ひばりが丘に住みたい」と言う、虚仮の一念を止めることが出来ず、娘を逆上させていく。母に強いられて、ひばりが丘近くにある一流女子中学校への受験に失敗し、公立中へ通うが、高級住宅街にひときわ小さな家に暮らすことが知られて、いじめに遭う。

 暴れて、物を叩きつけ、母親の大切な家の中で暴れて泣き喚く娘。しかし、事件はお隣の医師宅で起きる。

 そのまたお隣のポシェットばあさんが、あくどそうに見えて、一番活躍する常識人だった。彼女を、夏木マリが好演していた。

 やはり、ドラマの方が非常に細やかな演出、原作を大きく膨らませていたので、これは★3つに。

 『ホテルローヤル』  ★★★☆☆

ホテルローヤル

ホテルローヤル

 直木賞受賞作だが、これより桜木には、良い作品がある。これは小粒な短編集。出てくる人は皆、貧乏で、寂れた北海道の根釧台地のラブホテルの歴史、かかわった人々のエピソードがつつましく語られている。

 侘しくて、寒々とした。

 しかし、掃除婦のミコの悲哀と救いの章「星を見ていた」と親に捨てられた不潔女子高生の「せんせえ」の章、たくましい主婦の「バブルバス」の章、最後の「ギフト」章は最後に救いがあった。

 登場人物がぶすでさえない女性ばかり。男もあまりかっこよくない人ばかりだったので、もう少し花があっても良かった。
 故に★3っつ。