ちょス飯の読書日記

 『ビルマの竪琴

  ★★★★☆

 これは、こども向けに書かれたというが、大人が読むべき素晴らしい物語だ。作者は、想像だけで書いたのだそうだが、ビルマの気候や風景、小乗仏教に基づいた人々の暮らしが丹念に描かれている。

 とくに、戦争の愚かしさが書かれている部分は、こどもにもよく分かるだろう。
 ビルマの地を守るためと称して、敵国兵士のみならず、よその国土を血で汚し戦場にして多くの現地人の命も奪ったことだろう。本書には書かれていないが、捕虜に対する扱いも、冷酷非道をきわめてしまった。

 既に、戦争が終わり、日本が無条件降伏したのだと聴いても、密林の洞窟ににたてこもり「命を捨てることが、英雄のすることだ」と投降を勧めに来た水島をののしり追い払う場面が書かれている。

 2羽の青いインコが、水島の気持ちと、同僚だった兵士たちの気持ちを口伝いに教えられて、話す場面。涙があふれた。

 映画化もされているが、屍をさらして異国の地で眠る日本兵は、まだまだ多い。しかし、身元を確認できるものは、いよいよ無くなってきていることだろう。戦後70年も経ってしまったのだから。

 東大の教授として、多くの学生を戦地に送り慙愧に耐えられなくてこれを、書きたいと作者竹山 道雄は考えたのだろう。

 収録されている、こどもの頃の思い出を綴った短編集も非常に面白く、わかりやすい文章だ。若者の、質問にも答えている小編も興味深い。
 世の中の矛盾と、自分を持って生きるとはどういうことか、など、今の時代にも非常に役に立つ知恵が書かれている。

 最後に、インドの仏教遺跡めぐりは紙数が足りないが、彼が仏教に帰依して大きな叡智、学問としてとらえているのだと感じた。

 経済力とその国の文化度、幸福度は必ずしも一致しない。

 竹山の、ビルマに対する尊敬を感じた。挿絵が、もう少し子供向けの方が良いと思ったので、マイナス1★。