ちょス飯の読書日記

 『鬼神の狂乱』   ★★☆☆☆
 

鬼神の狂乱

鬼神の狂乱

 これは、事実に基づいた伝奇物語。作者が『狗神』を書いていた頃、出会った資料から書かれた。

 江戸時代、弘化時代高知城下、山深い貧しい村の百姓がある時刻になると、狗神憑きになったかのように、暴れまくる。だが、夕刻には静まり飯をもりもり食べて、寝る。翌日には、そのことをすっかり忘れている。

 だんだん、狂乱するものが増え、年貢米の生産が減ってしまうことを恐れた、侍役人が調べに来る・・・。

 最後は、あっけないが百姓がただ支配されていただけではないことが胸にストンと落ちた。

 虐げられているだけではない、誇り高く生きているものたちもいるのだ。大地は誰のものでもない。

 文字を知らぬ者の恋文が興味深かった。小石や松葉で気持ちを伝える。ふたりの逢瀬の場所にある平たい石の上に置く。

 ただ、ノンフィクションに近い物語なので、狂乱の描写にやや迫力が無かった。