ちょス飯の読書日記

 『ブギウギ』  ★★★☆☆

ブギウギ

ブギウギ

 太平洋戦争前夜、敗戦、戦後とドイツ人捕虜のUボート艦長の水死を巡って、ナチス残党の陰謀が明かされる。
 
 ぽっちゃりしていて、のろまな箱根の旅館で働いていた女中リツは、どんな情況でも歌を歌い続け、活路を開き遂にはブギウギを歌う歌手となっていく。ドイツ人水兵のパウルに、犯されてしまうが、自ら性の喜びを受け入れ、薪小屋で逢瀬を重ねて彼の子を産む。戦地から帰還した夫は捨て、子も置いて、彼女は戦後の東京へ出て行く。

 女の強さ、したたかさがいつも、彼女の作品の中にある。

 戦時中でも、知識階層の中には戦争を反対していた者がいた。また、ドイツ軍の中にも国を離れていれば、ナチによるユダヤ人タイ虐殺「民族浄化」を知らぬものがいた。そのようなことを、するはずが無い、すべきではないとたいていの者は思っていたのだ。

 現実にアルゼンチンに逃亡したナチの残党が、以前逮捕されたニュースがあったが、ユダヤ人から没収した資産を、親ドイツ国だったアルゼンチンに秘匿していたことを、初めて知った。

 主人公は、ドイツ語と英語に堪能な学者・通訳者法城。弱々しい男。坂東の物語に、ヒーローはいない。

 しかし、最後の大立ち回りはかっこよかった。

 2つの逆転劇が最後に待っていたが、これは無い方が良い。

 これは、編集からの依頼で書いたものかもしれない。迫力がない。お題や資料を与えられて、書かされたような気がする。

 映画に出来る、活劇物語だ。