ちょス飯の読書日記

 『聖アントニオの舌』  ★★★☆☆

 イタリアの呪術的ないわれのある遺跡めぐり。奇跡を起こした聖アントニオの遺体を、観光の目玉にして儲けようとする教会同士のせめぎあいなど、歴史上の出来事と現代の底に住む人々の対比が面白い。

 あまりにも残虐に侵攻してくるフン族の記事は恐ろしかった。今も、殺戮がこの地で繰り返されるのは、その血が続いているのではないかという記述は怖い。

 日本の神と、イタリアの神の信仰の比較。異端とされた人々こそ非常に敬虔なキリスト教徒だったという皮肉。

 作者のノンフィクションものを初めて読んだが、文庫で写真も少ないので、ぴんとこない。