ちょス飯の読書日記

 『山妣』 やまはは  ★★★★★
 

山妣(やまはは)

山妣(やまはは)

 誰が主人公だったのだろうか。やまんば、つまり山に隠れ住む母その人の、愛した男ふたりと子ふたり・てると涼之助、そして娘の婿である地主の若旦那鍵蔵の群像劇だ。時は、明治時代の初めか。

 両性具有の人は、稀に生まれるという。やまははとマタギの間にできた子は、陰茎と膣を持って生まれてきた。その子を見るなり父は、山神の祟りとして、旅芸人に託してしまう。

 山の民の狩猟の様子が、とても興味深かった。

 炭鉱夫相手の娼婦・君香は男に惚れても、そのたびに裏切られてしまうが、金を盗み、男と逃げて山に潜んでいたが・・・
 追っ手を叩き殺して、・・・遂に狩を覚えて、自分で獲物を捕らえられるようになり、山の岩穴に25年間も、獣のようにたくましく生きている。

 あまりにも劇的に、過去の男やこどもたちに再会するが・・・

 貧しい小作の子で、地主の家で子守奉公をしている妙の母が、死ぬ前に胎の子の下ろし方を教える場面は、怖かった。自分が死んだら下ろした子の骨を、掘り出して棺桶にいれてくれ、と言う。父親はどんなに母親の心身を苛んだか、何も知らない。

 盲目の琴が、殺されてしまうのはちょっと悲しすぎる。

 どのような目に合わされても、「生き抜こう」とする女の柔軟なしたたかさ、強さに涙。

 両性具有の子を、山ならなんでもありうる。と、母は驚くこともなく受け入れる場面、涼之助を見守って、見送る場面は「ダンスウイズウルブズ」の場面のようだった。号泣

 ハードボイルドだった。