ちょス飯の読書日記

 『だから荒野』  ★★★☆☆

だから荒野

だから荒野

 桐野夏生の毒が抜けてしまった。
 主婦の自立ものとして、『魂萌え』が面白かったので、これはやや小粒な物語。

 それにしても、家出した主婦が出会う人皆に騙されるかと思ったら、最後は良い爺さんに会えて良かった。もう少し、老人が認知症で介護者をからめとる、翻弄する展開になるのかと思ったら、本当に真剣な人だった。
 長崎の原爆を体験しながら、生き残ったものの生き方を示して素晴らしかった。生後五ヶ月の妹が自分のせいで肺炎で死ぬという件、とても悲しかった。

 死んで行くものが、涙をすっと流したというところ。

 亡き父も、左目に涙が出ていたよ、と家人が教えてくれた。