ちょす飯の読書日記 『母』
- 作者: 姜尚中
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2010/06/04
- メディア: 単行本
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在日韓国人で東大大学院教授・ の父母、同居人の岩本(おっさん)の物語。
熊本弁のセリフが良い。
一番印象深い場面は、亡き長男のため、子どもの無事の成長を祈るため、地鎮のため、オモニ(母)が、懸命に「しゅーしゅー」と言いながら塩をまいて踊り、祈る姿・・・子どもたちにとっては、恥ずかしい。周りの日本人には狂ったように見える。だが、私はオモニの偉大さに、非常に感激した。
オモニは文盲であった、と息子は何度も書くがなんと賢く気高い韓国人らしい情熱の女性であったことだろう。
日本の敗戦後から大阪万博、オリンピックに向かう高度経済成長の時代、アボジ(父)の廃品回収業は、大成功。
日本に嫁いで30年ぶりに帰った故国の弟に、オモニは自分の血と汗で稼いだ50万円もの大金を、当然のように与える。
オモニが、日本でたくましく生き抜き、頑張って稼いでこれたのは、恐らく故郷の父母、きょうだいに少しでも金を上げたかったからだった。
祖先、両親、夫の親族にも伝統を守り、精一杯尽くすオモニだが、赤の他人にも情けをかけ、周りの人を大勢幸せにしていく。
強くて優しい母。
日本の母のなかにも、戦前はこういう人が少なくなかっただろう。
おっさん(と夫の葬式)の時、本名であの世へ旅立たせるという場面。 今も日本社会に在日の人への偏見や差別があるから、普段は通名で生活する人が多いのだろう。死んで自分の名を取り戻すのか。
いや、どこで生きようと、何と呼ばれようとおっさんは、おっさん。父は父だ。
姜尚中氏は大学時代父母の祖国を見、帰国後彼と同じ在日の学生の焼身自殺を機に、自分の名を敢えて本名に変えた。
父の墓石には、通名を表に刻み、裏に本名を刻むことにしたとある。
在日の人々の、ごく普通のことなのだろうか。
息子が実母を描くのは難しい。
もっと、詳しく聞きたいところがある。ノンフィクションではなく、物語としたらどうか。故にマイナス2★