ちょス飯の読書日記

 中村文則『最後の命』    ★★★★☆ 
ネタばれ注意
  

最後の命 (講談社文庫)

最後の命 (講談社文庫)

 これも怖い犯罪の物語。
 小学二年生だった私は、同級生の冴木と顔見知りのホームレスが集団で、「やっちり」(と呼ばれる女性)に襲い掛かっている現場を見てしまう。
 その衝撃とやっちりを救えなかった罪悪感が、私を苛む。一方、冴木は真逆の苦しみを負う。
 彼は、自分も勃起していた。同じことをしたいと思ったと。

 25才になって連続婦女暴行指名手配犯となった冴木と私は、再会する。

 以下抜粋 165〜166頁

 俺はなぜ、こんな人間になってしまったんだろう。親のせいだろうか。それともあのホームレス達のせいだろうか。・・・・・・・人間の中には、俺は全ての願望と欲望と感情があると思っている。それはただの本能って意味ではなくて、人間特有の複雑な理性と感情が相まって、・・・・・・変容された感覚のうねりがあるような気がするんだ。種類によって潜伏していたり、本当に、姿も見えないくらい小さくなっていたりするだろうけど、全部あるような気がするんだ。

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 冴木は、池面で学力も体力も秀でている、私のただひとりの友人だ。女性と正常な性交渉もできるのだが・・・・。どうしても、女性を強姦しなければいられなくなる性癖を抑えることができなくなってしまう。

 とても怖い。

 婦女暴行などとんでもない、許せぬ犯罪だが・・・人間の人間性の欲望「無理やりに犯す」という願望のひとつの解釈を私は教えられた。