今週のお題「心に残るプレゼント」

18才になった私は、自分プロデュースの自分誕生日会を五、六人の友人を招き自宅で開いた。

 その年の前年、友人のDちゃんは母親を乳がんで亡くしていたが、招待に応じてくれて、元気な姿でわが家にやって来た。
 Dちゃんは、中学校を卒業後、隣町の縫製工場に就職したものの、不器用でのろまなので、すぐにクビになってしまって家事をしていた。
 彼女の父親は日雇い人夫で、大酒飲みという噂。私の母は私が小学生の頃、「Dとは、仲良くしてはいけない」、と言っていたが、・・・・。

 「心に残るプレゼント」それは、Dちゃんがくれた「松葉牡丹の種」。彼女の住むアパートの片隅に咲いた松葉牡丹の種を、Dちゃんは採取して紙に包んで私の18才の誕生日のお祝いとして、プレゼントしてくれました。ケシ粒のように細かい種でした。

 驚きました。

 他の出席者は、皆、綺麗に包装され、リボンをつけた箱入りのどこかのお店で買ったものをくれたのに・・・
 
 私は、早速それを庭に蒔きました。その成長を、毎日わくわくして観察し、花が咲いた時にはその可憐な美しさに驚き、喜びました。
 小さな小さな花を育てる喜びを彼女がくれたことと、きっと私が喜ぶに違いない、とこのプレゼントを選んだDちゃん。
 彼女の心の素直さ、屈託の無さにものすごく心が動かされました。

 あれから30数年。互いに故郷から遠く離れたところに嫁ぎ、なかなか会えなくなった今でも、Dちゃんはタケノコやじゃがいもなどを、はるばる送ってきてくれる。

 物くるる友はありがたきかな。