ちょス飯の読書日記

 山本周五郎全集 第16巻 新潮社 

山本周五郎全集〈第16巻〉さぶ・おごそかな渇き (1981年)

山本周五郎全集〈第16巻〉さぶ・おごそかな渇き (1981年)

さぶの他の短編も読了した。
 『ひとごろし』 ★★☆☆☆
 臆病者の兵法に剛毅な侍が、遂に負ける。でも、追い詰められる侍の方が気の毒になってしまった。

 『へちまの木』 ★★☆☆☆
 江戸時代の瓦版が、今の三流週刊誌やスポーツ新聞と同じように、いんちき捏造記事を書いたり、Y談を載せていたというところがおかしい。恵まれた生まれの美青年が、貧民たちと交流するが・・・・。女が、頼みもしないのに親切にしてくれて、寝てくれて小遣いまでもらう。・・・こういう話も巷間にはあるものだ。

 『あとのない仮名』 ★★★☆☆
 これも、女からもてもての植木職人が、仕事をやめてしまういきさつの話。最後のどんでん返しが面白かった。また、可憐な女に見えても、実際は違うこともあるというのは、真実だろう。題名も洒落ている。その意味が分るのは、物語の終わりになってやっとだ。

 『枡落とし』 ★★★★☆
 貧しさゆえの親による子への虐待、搾取。けれど負けない子もいる。実の母に虐待されても心正しく優しく育つものもいる。
 一方裕福な育ちをしても、祖父の決めた職人と結婚し、祖父亡き後「ぐれた」夫に凄まじい暴力と搾取を受け続けてしまう母娘がいる。ついに夫は、人を殺してしまう。
 人殺しの娘となったおうめを変わらず愛して、騙りに来た幸助の罠を見破った芳造。
そして、あうめの母親おみきにおっかさんになってほしいという。

 犯罪者とその周辺の人々を、周五郎先生は常にあたたかい眼で見つめて描く。


 枡落としとは、枡を使ってねずみを捕る罠のこと。

 『おごそかな渇き』 ★評価不能
 山本周五郎絶筆。書いている途中で、急逝された。

 これは、現代劇である。戦後15年。宗教についてのセリフと記述が多くなかなか面白そうな展開だが・・・・。いかんせん。お体が丈夫ではないのに、愛煙家で酒飲み。仕事が大好きだったそうだが。もっと健康管理をして、仕事量も減らしてほしかった。儲かったお金を、きちんと使ってからお亡くなりになられたのだろうか。