ちょス飯の読書日記

『おそろし』★★★★☆未読の人は、ネタバレ注意!

おそろし 三島屋変調百物語事始

おそろし 三島屋変調百物語事始

 本当におそろしかった。おそろしいことだ。しかし、最後は尻切れ。まだ続くかのような終わり方。
 一番おそろしいのは、あの世とこの世を行き来できる「商人(あきんど)」だ。彼は自分のことを、顧客からの要望を橋渡しするためだけの存在だと言う。しかし、実際には、彼はあの世に行けぬ亡者?たちの片棒かつぎだ。

 犯罪者と被害者と周辺のものの苦悩、悲痛にそって宮部はよく描く。本当にその通り。リアルで読み手も充分その悲しみを共有する。許容する。

 ものすごいトラウマ(憑依)から脱出するために、当人の瞳の中から入り、その人の記憶の中で主人公が闘うという妖怪譚は、古来からあったかも知れぬが、美しい曼珠沙華が、物語を始め、そして終わらせるという鮮やかさ。宮部節だ。うならされる。

 とても読み応えがあり、最近読んだ宮部作品の中では一番の出来。
彼女の作品は、かっぱえびせんのよう。やめられない、とまらない。どうしても一気に読んでしまう。寝不足になり、目が痛む。