ちょス飯の読書日記
- 作者: 芥川龍之介
- 出版社/メーカー: やのまん
- 発売日: 2009/03/01
- メディア: 単行本
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藪の中 或阿呆の一生(以上短編小説)、文芸鑑賞(講座)、或旧友へ送る手記(遺稿)
龍之介を産んで八ヵ月後、母は発狂した。祖父母に育てられた「賢すぎる」彼は自分を「或る阿呆」と呼び、「漠然とした不安」に苦悩し、35才で服毒自殺を遂げる。十数年間だけの文筆活動だったことに、あらためて驚く。
ラジオの「キラキラ」で書評家が、彼の作品を激賞していたので、大活字の本を見つけ読んでみた。
どれも、人間の暗い、深い闇の面ばかりを描いている。『蜜柑』を除いては。
哀愁とユーモア、滑稽さもあるが・・・。総じて陰鬱である。
一番印象に残った作品は『地獄変』。猿が哀れだった。
「地獄を描くためには、地獄を見なければ描けぬ。燃え盛る牛車の中で、焼け死んでいく女の、苦しむ様子・のた打ち回りの様を見たい。」と言う絵師に、地獄の絵を描いてほしいと頼んだ大殿は「その望みかなえよう」と言う。
焼け死ぬ女に選ばれたのは、彼のただ一人この世で愛する娘だった。
あまりに恐ろしい寓話だった。
芸術家と常識的な社会生活・人付き合いとは相容れぬものなのだろうか。地獄を描いた後、絵師は自死する。満足して。
また『芋粥』は、吉田兼好の『徒然草』に芋粥好きの僧の話があるが、芥川は、意識して対抗したのだろうか?こちらは、とても悲しい出来だ。
いじめられっこで貧しいちびで猫背の五位が、金持ちの上役に大好物の「芋粥」を食べさせてもらう話。しかし、あまりに大掛かりな仕掛けに、五位は、食べる前に腹が一杯になってしまう。「大好きだ、いつか腹いっぱい食べてみたい」と夢見ていたころの方が、ずっと幸せだったというオチだ。
なんとも、切ない。幸せはどこにもない、真実も。と言いたかったのか、龍ちゃんは。