ちょス飯の読書日記

飢餓海峡 上 ★★★☆☆ 

飢餓海峡(改訂決定版) 上

飢餓海峡(改訂決定版) 上

 映画を観て、原作を読んでみたくなった。
 大罪を犯して、大金をつかんだ犬飼が、薄幸の娼妓 八重にその金の一部を与える。
 悲惨な状況下でも、一夜の相手をしただけの客・犬飼を一途に慕い、なおあたたかい心を持って健康を維持して働くヒロイン八重。可憐でかわいい。しかし、苦界から脱出しできるくらい貯金が出来て、別の仕事を始める資金ができていても、「この仕事があっている」という娼妓たちもいた、という記述になるほどと思った。
 男の性欲のはけ口となって、ただ忍耐していただけではなく、男たちから感謝され、娼妓なりの喜びもあったことだろう。
 赤線廃止前夜の頃の社会情景が描かれているが、どの娼館もこの仕事に意義をもっており、女たちは悲酸な目に遭わされて働いていたわけでもなく、廃止に反対していたというところは、興味深い。