ちょス飯の読書日記

『秀吉と利休』★★★★★

秀吉と利休 (中公文庫)

秀吉と利休 (中公文庫)

新潮社文庫版、昭和44年発行、同59年25刷のものを読んだ。

 映画が面白かったので原作を読んでみたくなったのだが、脚本がすごく良かったことに気づく。まったくそのままではないが、本当に赤瀬川源平氏が担当しただけのことはある。

 野上弥生子氏の重い文体。容赦ない冷徹な表現。まさに「利休切腹の理由」を400年後の世界に住む私達に示してくれた。また、細やかな生活感あふれる情景描写にうなる。
 牛がおわんのような糞をする場面や、朝餉の献立。茶菓子のひとつひとつの詳細なカメラワークを文章でやる。
 すごい。

 ちょん切られた首だけになった父の姿に、はじめて父の愛情を感じ理解する息子・紀三郎。これが解説で読むと作者の創造した人物だと言う。これは史実を基にした野上だけの物語なのだ。

 虚構であるはずの小説・「野上の妄想」がまるでその場を活写しているかのようだ。