かいちゃんとデイト

 いきなり、電話。彼女は、いつも衝動的だ。「今公園で一服している、来ない?」と言う。
 7日の彼女の誕生日に、お祝いとして渡したかったものがあるので、自宅へ持って行きたいと思っていた矢先。「行く、行く」と飯をかっ込み自転車で向かった。
 丁度12時なのに、何故か彼女は昼時に会っても、飯を食べようとしないので、お茶とコーヒーを自販機で買い、ひとつ上げた。

 去年、鈴蘭の球根を4個ホームセンターで買い、ずっと芽が出るのを待っていた。1つだけ植木鉢に、3個はプランターに。寒かったからか、全然成長せず、今日見ると植木鉢のもののみ、つぼみが!!出来ていた。
 鈴蘭は、かつてかいちゃんが中古住宅を購入して、育てていたものだ。彼女にあげたくて、chosu-manmaは育てていた。
 でも、引越し先の自宅へ行かせてと今まで何度行っても、何故か断られ持参できなかったのだ。

 夏のような暑い日。木漏れ日の下のベンチに貧乏臭い息子のお古のトレパンをはいて、友人はいた。でも、大きな帽子を被り、いつもとは違い、綺麗にメイクしてにこにこしている。

 鈴蘭だとは、咲いてから気づいてほしかったが・・草花の好きな彼女は、見破ってしまった。

 3人の子を残して48才の若さで亡くなった夫と、10年あまり暮らした家の庭にあった鈴蘭。かいちゃんは、ローンが払えず家を手放した。
 彼女は、ガーデニングが趣味だったから、生い茂っていた庭の草木の事が、さぞ心配だったろうに・・・
 あの家も、庭の木々も跡形も無くすべて引っこ抜かれて、更地になったところへ、次の家族が可愛い新居を建てて、今は幸せに暮らしている・・。ということは、chosu-manmaは、かいちゃんに知られたくない。ので、言わないでいる。・・・・

 “RETURN TO HAPPINESS”が花言葉だよ、でも、かいちゃんはずっと、幸せそうにしているね。とchosu-manmaは、言った。

 プレゼントを手渡したら、帰ろうと思っていたが、次々と話題が弾み、2時間半もお喋りしていた。来月末までに、ふたりともやせて、もっと綺麗になって会おう、とかいちゃんは提案した。