ちょス飯の読書日記
『言霊』 ★★★★★
- 作者: 石牟礼道子,多田富雄
- 出版社/メーカー: 藤原書店
- 発売日: 2008/06/18
- メディア: 単行本
- クリック: 5回
- この商品を含むブログ (9件) を見る
ふたりとも病む体に、健やかな魂と言葉を持っている。それにしても、石牟礼は小学校、実務中学でしか学んでいないのだが、この教養の深さ広さ、懐の大きいことはどうだ。
半身不随となり前立腺がんの治療の苦しみに耐えて、多田は彼女からの手紙に力づけられ回復して行く。奥様の介護もいかばかりであっただろうか。
『葭の渚』 ★★★★★
- 作者: 石牟礼道子
- 出版社/メーカー: 藤原書店
- 発売日: 2014/01/20
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (2件) を見る
石牟礼道子自伝。祖母が気狂いであったこと、最愛の弟が鉄道で事故死していることが書かれている。
弟はチッソの社員であった。精神科に入院していたというが、彼が家に結婚相手を連れてきた時の喜びが、あとで哀しい。
彼女の母方の祖父が、道路を建設するのだが当時は公共工事とされなかったのか、彼自身の持っていた山を売っては、人夫を雇い工具を買っていたという。
羽振りが良かったのに、結局道子が9歳のときに、最後の道路を完成させて、大きな家を手放し、とんとん村へ引っ越したという。
多くの村人のために道路を作るのだが、自分の財産を増やすことには無頓着だった祖父。そして、家族から離れて愛人宅で暮らすようになる。
祖母の発狂は、道子の母が10歳の時だったという。そのとき道子の母は、「これからは自分が、母親にならんば」と決意したと。
家族に気狂いの人がいても、村の衆は助けてくれる。後ろ指を指している人もいただろうが、とくに売春宿の親孝行な娼婦たちは、このばあさまを可愛がるのだった。最下層に暮らす人々のいたわりや、助け合い、情け深さに涙。
道子の父も、気狂いの義母を大切にしていた。淫売と呼ばれる娘が、刺殺されたときも彼が解剖に立会い、弔いまでしたという。合掌
石牟礼道子氏の、熱情慈悲深さはやはり先祖から受け継いでいたのだろう。