ちょス飯の読書日記

 『苦海浄土・第一部』

新装版 苦海浄土 (講談社文庫)

新装版 苦海浄土 (講談社文庫)

  ★★★★★

苦海浄土・第三部』 

  ★★★★★
 石牟礼氏の死亡記事を読んでから、再読。若松英輔氏が、読むと歯が折れると言っていたが、確かに。
 水俣に、チッソがやって来て頭の良かごたる会社行きさんは、日本のために化学製品を製造し多くの人々の食糧増産に貢献した。昆布のごたるネクタイを首からぶら下げて革靴を履いて会社へ行く人々。
 しかし、水俣湾周辺の貧しい漁師の村では奇病が発生してしまった。彼らは何故このような悲惨な目に遭わねばならなかったのか。

 ほんなごつおとろしか。

 眼の前のあまりに恐ろしい出来事を、「私」は書かねばならないと思った。そして、患者たちのために何ができるかと行動していく。

 ただ、チッソが悪いという内容ではなく、あまりにも尊い水俣の海山川の美しさ、被害者の人の声を聴き取り、感じ取り石牟礼は書いた。

 ルポルタージュではなく、聞き書きではなく物語である。

 経済発展の蔭にこのような激烈な苦しみを背負わされてしまった人々がいたこと。今も、水銀中毒の苦しみを持ちながら行き続けている人々のことを私達は、知らなければならない。

 胎児性水俣病患者ほど、近代化工業化する日本を象徴する人々はいない。